肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)
肩関節周囲炎とは余り聞きなれない診断名かと思います。
これは平たくいえば「四十肩・五十肩」といった肩関節内部で起こる関節疾患と同義であると考えられます。
恐らく、肩の疾患と言いますと「肩こり」に代表されるような筋肉系の疾患が思い浮かぶと思われますが、この肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)は「関節内部」のトラブル(炎症等)によって痛みや痺れ、そして特徴的な「関節稼動域の低下」を招く疾患です。
発症するのが比較的「中・高年」になってからという事もあり、患者様が多い年代にちなんで「四十肩」「五十肩」といった名称がつけられています。
「変形性膝関節症」・「変形性股関節症」等と同じく「更年期障害」の一つとも言われています。
現在、合同会社腰痛治療ナビに寄せられる相談で多い肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)の自覚症状には
- 肩関節の運動時に起こる鋭い痛み
- 肩関節の運動時に起こる痺れのような違和感
- 肩~首に感じる重苦しい、だるい感覚
- 肩関節の稼動限界の縮小(肩が広く回らない・あがらない)
この肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)は「肩こり」に比べて「痛み・痺れ」といった自覚症状が多く、また「関節稼動域の縮小」という日常生活に支障をきたす症状が出易いという特徴があります。
肩関節の中で何が起こっているのか:肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)
肩こりは主に筋肉に関する疾患であり、肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)は肩関節の内側で異常が起こる疾患である。
そして、肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)の場合は「肩関節の稼動域の制限」という筋肉系の肩こりにはない症状が見られる。
こういった状況からも、関節内で起こっている何かが関節の稼動域を制限していると考えられます。
では、一体肩関節の中で起こっているのか。そこから肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)の仕組みを理解していきましょう。
肩関節の仕組みについて
まず最初に学ぶべきは「肩関節」そのものについてです。
肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)が発症する部位である関節の仕組みを理解する事は最低限必要な事と言えます。
まず、「関節」について簡単な説明を行いますが、関節とは骨と骨の間にできる空間を指します。
ですので、骨1本で関節は構成されません。必ず2本以上そこに骨が関わります。
肘関節は「上腕骨・尺骨」があり、股関節は「骨盤(腸骨/坐骨)・大腿骨」といった感じです。
そして、肩関節の場合は「上腕骨・肩甲骨」から成り立っている関節です。幅広い稼動域を持たせる為に股関節と同じ「球状関節」となっています。
さて、上腕骨と肩甲骨から成り立つ肩関節ですが、骨と骨が直接接触をしようものなら、骨表面の神経がビリビリ痛み、表面の軟骨が削れ、とんでもない事態になってしまいます。
そんな状態では毎日の生活はおろか、満足に肩の上げ下げをしている場合ではありませんので、当然ながら少し特殊な仕組みになっています。
まず、肩関節を構成する要素を覚えていきましょう。
- 「上腕骨」
- 「肩甲骨」
- 「関節包」
- 「滑膜」
- 「滑液」
- 「軟骨」
- 「軟骨遊離体(関節ねずみ)」
- 「靭帯」
- 「骨棘」
肩関節を理解するには上記の言葉を一通り覚えれば完了です。
次に、それぞれの部位の役割について簡単に説明をします。
【上腕骨】:上腕の骨
【肩甲骨】:肩側の骨
【関節包】:関節を包み込む膜組織。
【滑膜】:関節包の内側の組織、滑液を分泌する
【滑液】:滑膜から分泌される潤滑油。関節包は滑液に浸されている。
【軟骨】:関節面(骨のうち、関節に面している表面部)
【軟骨遊離体(関節ねずみ)】:関節軟骨が剥がれ、関節包内に浮遊してしまったもの。痛みの主要因の一つ。
【靭帯】:関節包の滑膜組織の更に外側を包み込む、柔軟な組織。ゴムベルトのようなもの。
【骨棘】:関節軟骨の遊離などの刺激を受けて、骨が異常発達をしたもの。痛みの主要因の一つ。
如何でしょうか?徐々に理解が進んできましたか?
肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)の痛みのメカニズムは先に結論からいきますと、
1.関節遊離体(関節ねずみ)が滑膜を傷つける
2.関節遊離体(関節ねずみ)がはがれた部分で骨棘が生まれ、滑膜を傷つける
3.関節遊離体(関節ねずみ)が滑膜中を移動し、違和感を感じる
こういった現象が「痛み・痺れ・稼動域制限」といった症状に結びついているのです。
慢性的に肩がだるい、という「肩こり」に比べて、肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)の場合は「突発的に痛みが走る」「特定の姿勢・位置にくると痛みが走る」という点が特徴になります。
これは「関節遊離体(関節ねずみ)」の位置関係に大きく左右される事から生まれる不定期さなのです。
肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)の厄介なところは、原因が「遊離した軟骨」「骨棘」という物理的な異常である事です。
これは、筋肉に対処する事で治療可能な肩こりとは異なり、「関節遊離体(関節ねずみ)」「骨棘」をどうにかしなければ症状は消えません。
四十肩の根治治療は「手術が一般的」とされる所以がここにあります。
ですので、四十肩は「予防」と「対処療法」が大切な疾患と言えるでしょう。
肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)をなるべく遠ざけておくには
肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)は肩関節、それも関節包内で起こる物理的な異常が主な原因です。
ですので、一度それが起こってしまうと、物理的に原因となるもの(関節遊離体等)を取り除かなくては根本的な解決には繋がりません。
その為、大切な事は「ならないようにする」という基本的な予防策となります。
そして、発症してしまった場合は関節が固まらないように適度な運動療法をしながらうまく状態をコントロールする事が大切となります。
「予防をする」「発症後、状態をコントロールする」という事において、取り組む内容に大きな違いはありません。
- 「適度な肩関節の運動を定期的に行う」
- 「肩関節周辺の筋肉をしっかりとほぐす」
- 「肩関節周辺の筋肉をしっかり鍛える」
- 「筋肉に十分な栄養と酸素が行き渡るように食を整える」
これらの点を踏まえて肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)をうまくコントロール下に置いておくことが大切です。
また、肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)と診断をされたとしても、
- 実は頚椎の歪みによる筋機能不全だった
- 筋膜上の問題からくる痛みだった
- ストレス等の心因性の問題からくる痛みだった
というように、実は症状は似通っていても、厳密には肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)ではない場合も少なくありません。
診断だけでは「ひょっとして・・・・」といった可能性がまだまだ沢山ありますので、まずは「骨格」「筋肉」の状態について、しっかりと把握しておく事をお勧めします。
実は「筋肉」「骨格」を整えるだけであっという間に改善するような状態なのかもしれません。
そんな状態だったのに、肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)と言われて「手術しかないのかな・・・」と落ち込むのは大変時間が勿体無いわけです。
まずは、「肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)」を知り、現在の自分の状態をしっかりと把握する。
敵を知り、己を知らば百戦危うからず。
やはり、「肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)」についても、この言葉がピッタリ当てはまります。

















